茅葺き作業

茅葺きは地元でとれるススキや葦などを建築資材として活用する、究極のエコ建築です。
我々の茅葺き作業も、集落内の茅場での茅刈り作業から始まりました。
写真の茅場は、昨年雪が降る前に茅を刈っておき、そのまま雪の下に寝かせておき、春になっていらない葉が腐って落ちやすくなった状態のものです。
茅刈りの指導をしてくれる大橋昭司さんが、茅から葉を落とす作業を見せてくれています。
左手にひとつかみの茅を持ち、右手に持っている長さ50cmくらいの竹の棒で茅をしごくようにして葉をこそぎ落とします。
だいたい葉を落とし終えた状態の茅の束です。
葉落としを終えた束を、さらに束ねて、写真のようにツナギと呼ばれる藁束で2カ所縛ります。
すっかり葉を落とし、芯の部分だけになった茅を束ね、写真のように立木に立てかけて、乾燥させます。
1反(約1,000u)ほどの広さの茅場で、一生懸命茅を集めて、写真のような僅かな量がとれただけでした。
茅葺き職人の内山光治さんは、20シメは必要と言ってました。写真の茅で3シメがいいとこでしょう。これではとても足りないと分かり、急遽茅刈り作業を追加することになりました。東京から応援を頼んだりして、住民の蓄えを分けてもらって、必死にかき集めても結局10シメ足らずでした。
2間×2間わずか4坪の小屋の屋根で茅葺き作業をします。
昨年すでに主構造はできあがっており、その時点で小屋組は、いわゆるサス(扠首)を渡した合掌造りではなく、
束を立てた造りになっています。
今回はその小屋組を利用して造りますので、和洋折衷のような構造になります。
まずは、ヤナカと呼ぶ横材を加え、写真にようなスケルトンを造ります。
茅葺き職人で集落住民の内山昭平さんがノボリクダリと言う竹材をヤナカに縄で縛り付けています。
このノボリクダリとヤナカに茅をくくりつけて茅葺き屋根が出来るので、大事な下地づくりです。
写真の竹を結んでいる結び方は、農作業などでよく使う結び方で、男結びとも呼ばれますし、庭師が生け垣を結ぶ時にも使います。2本の端がピンと立っていないとカッコウが悪いそうです。
ノボリクダリを付けおわると、その上に簾(スダレ)を敷きます。
この上に茅を並べます。
昔は茅を筵(ムシロ)状に編んで使ったそうですが、今回は労力を省くために、量販店で中国製のやすい簾を買って、代用しました。
簾の上に茅を並べます。
写真のように下から茅を葺きます。
茅は予め集落の茅場で刈っておいたものを、3尺(90cm)程度に切り、直径20cm程度の束にします。
写真は茅葺きの親方。集落住民の内山光治(ミツジ)さんです。さっきの昭平さんはこの人の手元として、永年仕事を教わったそうです。
年齢はちょうど80歳ですが、さすがに屋根の上では身軽に動きまわります。
茅を切って、細い穂先と太い根本を交互に重ねて、均等な太さの束を作ります。束ねるヒモは、稲藁を束ねたツナギと呼ばれるものを使います。このツナギも農作業ではよく使うので、覚えておく必要があります。
草原に生えている雑草と思える茅ですが、こうして使えば雨露をしのぐ大事な屋根材になります。
光治さんは茅を大事そうに束ねます。
一番下、つまり軒先の茅の束は、ノボリクダリに結びつけられます。写真のように今回はビニールのヒモをを使いました。
それぞれの茅の束はヒモで、片方はノボリクダリに、もう片方は隣の茅の束のヒモにつなげられることで、茅の束同士が一体になります。
手前の細い竹が、横に並べられた茅の束を上から押さえつけるオシボクと言う横材です。オシボクは茅の間を縫って、下のノボリクダリに針金(18番)で繋がれます。
この茅の束の上に積まれる茅はこのオシボクに結びつけられます。
オシボクを茅の下に隠れているノボリクダリと結びつけるためにに、大きな縫い針のような「ハリ」の先に縄をつけて屋根裏まで突き通します。
屋根裏に人が待っていて、ハリから縄を取り、一度ハリは抜かれ、再度屋根裏に通ったハリに縄を付けて屋根の上まで引き出せば、これで茅を挟んでオシボクとノボリクダリが結びつけられたことになります。
この写真は屋根裏にハリが突き出たところです。
先の孔に縄が付いています。
屋根裏の足場の上で、ハリが出てくるのを待っているところです。
屋根の上でハリを刺す人と声をかけあって、位置を決めます。
昭平さんがツチと言う道具で茅を押し込みながら表面をならしているところです。
今までの作業で、茅はなんとか屋根の構造体につながっているようですが、茅の一本一本はきちんとつながっていなくて、手で簡単に抜ける状態です。
ですから、茅を束ねたツナギやヒモも中に茅を押し込む作業で茅一本一本を締め込むのが、このツチで押し込む作業です。
ツチの頭は面白い形をしています。昭平さんが茅をツチで押すところをアップで写した写真です。
斜面にあわせるように斜めになっており、しかもその面が細かい段々になっているので、茅がそこに引っかかって押し込まれる仕組みです。
腰より低いところの茅を押し込むときには、写真のようにツチを振り子のように振って、茅にぶつけます。そのため、ツチの頭は大きく重く作られています。
茅がどんどん積まれていくと、その上に積む茅をヒモを通すオシボクも茅の奥の方にあって、見つけづらいので、茅をかき分ける道具が必要です。
写真で光治さんが持っている薄い板が「ヘラ」と呼ばれる道具で、大きなやじりのような形をしています。これを茅の隙間に刺して、ぐりぐりとやると茅の奥が見えてきます。
切り妻の端部は、茅の束を妻面に束の断面が向くように縛り付けます。
写真で分かるように、勾配方向に並んだ茅と妻面の端部でそれらと直角に並ぶ茅の間は茅が扇状につながります。この部分の縛り方やボリュームの出し方に、光治さんの経験と腕にかかっています。
茅が屋根面の半分程度を覆った状態の写真です。
上の写真と代わり映えしませんが、さらに1日経った状態です。ここまでで3日間かかりました。
やっと反対側の屋根の茅葺きが始まります。
茅の付け方は変わりませんので省略して、妻側のケラバと呼ぶ端部の様子を写真に示します。
そろそろ全体の姿を意識して、特にこのような端部では茅の厚みのバランスがとれているかを慎重に見ながら、茅の付け方を調整します。
屋根の頂部に三角の箱状のものを被せて、その上に飾りとしてグシを乗せます。
この箱を乗せるまえに、箱の下に杉皮を敷きます。これは箱の茅面への荷重を分散することと、今回は茅のボリュームが足らないのでかさ上げに使う意味があります。
グシを乗せる箱の端部は妻面の印象に大きく影響しますので、大きさや取り付け位置を慎重に検討します。
取り付け方は針金を使って、小屋裏の材木(ヤナカやノボリクダリ)と結びつけます。
これがグシを乗せる箱の骨組みです。
屋根の上で角材を、長さを測りながら切って、組み立てます
板を貼る前に骨組みを針金で屋根に固定します。
杉皮の上に乗っているので、小屋裏と繋ぐには、杉板の隙間を通して、下の材木と結ぶ作業は根気が要ります。
箱に板を貼り終えた状態の写真です。板の長さもまちまちなので、貼った後で、墨糸で印をつけて、のこぎりで切ります。私も片面を全部切ったのですが、不安定な場所で、のこぎりを使い続けるのはかなり大変でした。
初めから長さを揃えておけばこのようなことはしなくて済むと思うのですが、大工のサトミヤさんは今までこのやり方でやってきたようです。
グシを乗せる箱にまたがるように杉皮(グシカワ)をのせます。
結局杉皮はこの上に乗るグシと斜面の途中に押縁として乗るアングル(鉄骨)で押さえられるだけで、杉皮自体が釘などで箱に打ち付けられることはありません。
頂部の姿です。グシ木が上に乗り、さらにドブチと呼ぶ部材で杉皮は押さえられています。鉄骨のおアングルをドブチに使っているので、上に竹を被せてアングルを隠しています。
グシ木箱の頂部(角)に自分の切り欠きで乗っかっているだけですから、写真の針金で転んで落ちるのを防いでいます。
グシ木に防腐剤を塗っています。今回丸太は集落内で用済みになっった電柱を再利用しました。
アングルをグシに固定している針金を隠そうと、棕櫚縄で化粧をしました。
いよいよ茅を切りそろえる段階です。
写真に写っているハサミを使います。
写真の4本のうち、右側の3本が屋根の茅を刈るハサミです。左端は茅の束をつくるために、地上で茅を切るためのハサミです。
屋根を刈るハサミを横から写すと、刃の部分の反りが違うことが分かります。左端の反りの強いハサミが茅屋根の平たい部分を刈るヤバサミと呼ばれるもの。他の2本は軒先やケラバと呼ばれる端部の整形に使うケラバオトシです。
ちなみに、ケラバとは屋根の端部を総称し、厳密には軒先の見上げ部分のことを指すそうです。また妻側の端部はノボリケラバと呼んで軒先と区別することもあるようです。
ヤバサミで屋根面を刈り揃えています。トラ刈りにならないように慎重に、様子を見ながら刈り込んで行きます。
軒先を切りそろえています。軒裏の見上げ部分はハサミを裏返しにして水平になるように切ります。
親方の光治さんが刈り揃えている後から、昭平さんが茅が足らなくて穴のように凹んでいる部分に茅(マキガヤ)を手で差し込んでいます。
写真は茅を差し込んだ後の姿です。これをまたハサミで切り揃えます。
一通り刈った後で、再びツチで叩いて、表面を揃えます。
写真は妻面を屋根裏からみたものです。
サス(角材)と屋根裏との隙間にマッコウと呼ばれる藁を束ねた材料を押し込みます。
屋根葺きが完了した姿の写真です。
グシの大きさもバランスがとれていて安心しました。
屋根の茅の重さと、冬季の積雪の重さが不安ということで、柱と桁の間に斜めにホオヅエと呼ばれる角材を入れて補強しました。
これで茅葺き屋根の足湯づくりは完成です。
左に見える水車は、住民がお湯を循環させるための動力源として取り付けました。この水車の回転をギアポンプに伝えて、お湯の循環ポンプとします。
妻面から見上げた写真です。
グシが格好良く収まっています。
ケラバの刈り込みも上手くいったようです。
ところでこの茅葺き作業は茅葺き職人の内山光治さんと内山昭平さんの二人が中心になって進められてきました。プランニングエイドや造形大学生らはあくまで、手伝いであり、作業のまねを少しだけさせてもらった程度の関わり方に終始しました。
茅葺きが上手くいったのは、二人の職人の技術のお陰です。
写真はこの足湯小屋からの眺めです。
目の前に棚田が広がり、遠くに山並みが眺められます。
この景色を楽しみながら足湯につかれば、きっと誰でも元気になれそうです。
茅葺き作業の報告でした。